前回の「PhoneRescue-Androidデータ復元」のレビューに引き続き、今回は同シリーズのiOS版のレビューになります。
日本人にとってのスマートフォンと言えばiPhoneであり、Appleから見ると日本は大変カモにしやすい良いお客様がいるマーケットになります。そうなると、どうしてもiPhoneに関するデータ復元アプリに需要が出てくるというものです。
今回は、脱獄しなくてもデータの復元が可能な「PhoneRescue-iOSデータ復元」をiMobie社からご提供いただいたので、実際に使ってみた感想をお伝えします。筆者の環境では、iPhone 7 (iOS 10.3.2)にiTunes 12.6.0という環境を用いました。
本記事では、簡略化のために以降は「PhoneRescue-iOSデータ復元」を、単にPhoneRescueと表記します。
データ復元のための4つのモードが搭載
PhoneRescueには、iOS端末の使い方や状況により4つのデータ復元モードが用意されています。Android版と異なり、いずれの製品も脱獄(Androidのroot化に相当)をする必要がなく、セキュリティ面のリスクがありません。

「PhoneRescue-iOSデータ復元」の4つの復元モード。 画面上の説明が見えている項目はiOSデバイスからリカバリーになる。
復元モード | 説明 |
---|---|
iOSデバイスからリカバリー | 今まで端末のバックアップを取っていない場合に使うモードになります。 削除されたデータを端末に復元できる他に、端末のデータをPCにエクスポートすることができます。 |
iTunesバックアップからリカバリー | iTunesバックアップの一部を指定し、端末にデータをインポートすることができます。 また、バックアップの一部をPC上に展開することができます。 |
iCloudからリカバリー | iTunesバックアップと同様のことができます。単にバックアップがiCloud上にあるかの違いになります。 |
iOS修復ツール | 端末が起動不可になった場合の最後の手段になります。 |
「iCloudからリカバリー」は機能面で「iTunesバックアップからのリカバリー」と大差がないため、また「iOS修復ツール」は筆者の環境で状況を再現できないため、本記事におけるレビューは割愛させていただきます。
バックアップの仕組みをうまく利用した「iOSデバイスからリカバリー」
iOS版のPhoneRescueは、開発陣が考えに考えて作った製品だと感じます。それがデータ復元における発想にあるからです。
iOSデバイスからリカバリーは、端末上で削除したデータを復元することができる機能になります。iMobie社に動作の仕組みを問い合わせたところ、この機能は以下のように動作をしているそうです。
- 端末のバックアップを取得する。
- バックアップを解析し「ユーザーからは削除したように見えているデータ」を抽出する。
- 抽出したデータを、バックアップの復元機能を用いて端末上に復元する。
PhoneRescueから端末のデータを直接スキャンするということができないため、取得したバックアップを解析するという動作になります。
興味深いのは、取得したバックアップには「ユーザーからは削除したように見えているデータ」も含んでいるそうなのです。ただし、このデータは端末上のデータべース更新により失われる可能性もあるため、直近で削除したデータだからといって、必ずしも復元できるとは限りません。
「iOSデバイスからリカバリー」の動作模様
iOSデバイスからリカバリーの動作模様をご紹介します。
1.復元モードの一番左「iOSデバイスからリカバリー」を選択します。

「iOSデバイスからリカバリー」を選択する。
2.復元したいデータの種類を選択します。例では「個人データ」のみを選択していますが、他にもメディアや有名アプリ(LINEやWhatsApp)のデータも復元できます。

復元したいデータを選択する。
3.デバイスの分析が進みます。この過程で、現状の端末のバックアップが取得されます。

デバイスの分析が進んでいく。
4.分析が終わりデータ一覧が表示されます。画像では削除された項目のみに表示を絞りました。筆者の前職の携帯電話番号の連絡先がいまだに残っていました。削除したはずなのに・・・

データの一覧が表示される。画像では削除された項目のみの表示に絞っている。
5.端末のiCloudの設定から「iPhoneを探す」機能を無効にします。少々面倒ですが、この手順はiTunesからバックアップを復元する時も同様に必要となる手順になるため、PhoneRescue固有の面倒なことというわけではありません。

復元前に「iPhoneを探す」の機能を無効にする必要がある。
6.データ復元前の最終確認になります。

データ復元前の最終確認。
7.データの復元が行われます。この時、手順4で選択したデータが手順3で取得したアックアップデータに差し込まれる形で、端末上に復元されます。

データ復元が行われる。
8.この画面が出たら、あとは端末上でバックアップ後の設定作業を行います。

復元処理が終わると、端末が再起動する。
「iOSデバイスからリカバリー」を利用する時の注意点
この復元モードを使う際に、利用環境を少し変更する必要が出てきます。その後少々不便な思いをすることがあったので、メモしておきたいと思います。
iTunesでバックアップの暗号化を有効にしている場合は、無効にする必要がある
iTunesでバックアップを取得している場合、バックアップを暗号化するオプションが用意されています。デフォルトではオフになっています。暗号化を有効にすると、バックアップ復元時にパスワード(Wi-Fiやメールなど)を再設定する必要がなくなり、その後がだいぶ楽になります。
しかしPhoneRescueでは、暗号化されたバックアップを利用したデータ復元ができないため、iTunesバックアップ機能を利用している場合はあらかじめ暗号化機能を無効にしておく必要があります。
データ復元後に「iPhoneを探す」を再び有効にする必要がある
「iPhone(iPad, iPod)を探す」機能は、iPhoneユーザーでも意外と知られていない便利な機能の1つです。iCloudのWebページ(https://www.icloud.com/)にアクセスして、自身のiCloudアカウントを使ってログインすることにより、以下のような操作ができるようになります。
- iPhoneが今どこにあるのか把握することができる
- iPhoneから警告音を出すことができる
- iPhoneを拾った人へのメッセージや連絡先を表示できる
- iPhoneのデータを遠隔消去することができる
iPhoneの紛失時を想定された機能になりますが、iPhoneがマナーモードのまま家の中のどこに置いたかが判らなくなってしまった時に、この機能を使うと簡単に発見することができるようになります。
話は戻り、PhoneRescueではデータ復元をする過程でこの機能を無効にすることになります。データ復元後もこの機能は無効になったままになるので、再び有効化することを忘れてしまうといざという時に困る結果になります。
バックアップデータを利用する「iTunesバックアップ(iCloud)からリカバリー」
iTunesバックアップ(iCloud)からリカバリーは、既に取得しているバックアップデータを解析することにより、そのバックアップデータから必要なデータのみを取り出して端末上に復元する機能になります。端末上へのデータの復元の仕方は、前述のiOSデバイスからリカバリーと一緒になります。
念のためその動作を体系立てると、以下の通りになります。
- 取得済みのバックアップを解析しデータを抽出する。
- 抽出したデータを、バックアップの復元機能を用いて端末上に復元する。
「iTunesバックアップからリカバリー」の動作模様
iTunesバックアップからリカバリーの動作模様をご紹介します。
1.復元モードの左から2番目「iTunesバックアップからリカバリー」を選択します。

「iTunesバックアップからリカバリー」を選択する。
2.復元するバックアップを選択します。

復元で使用するバックアップを選択する。暗号化されたバックアップを選択できるが、その場合は端末へのデータ復元まではできず、PCへのエクスポートのみを行うことができる。
3.今回はバックアップのスキャンを行います。

バックアップの中身と端末の中身を「比較」したい場合は、バックアップが暗号化されていない状態になっている必要がある。暗号化されている場合は「バックアップのみをスキャン」のみしか利用できない。
4.バックアップが暗号化されている場合、パスワードを入力することになります。

バックアップが暗号化されている場合、パスワードを入力します。
5.バックアップファイルの分析が開始されます。

パスワードを入力すると、バックアップファイルの分析が開始される。
6.バックアップファイルの中身が解析されていきます。この処理は非常に長いので、時間があるときにやることをお勧めします。

バックアップファイルの中身が解析されていく。この処理には非常に長い時間を要する。
7.バックアップから取り出すデータの種類を選択します。もし、バックアップデータが暗号化されていない場合は、取り出したデータを端末に復元することができるようになります。暗号化されている場合は、そのデータはPCにエクスポートすることだけができます。

バックアップから取り出すデータの種類を選択する。
8.バックアップファイルの分析が進みます。この後で、個別のデータ一覧が表示されるようになります。

バックアップファイルの詳細が分析される。
9.例では、メディアデータのみを分析対象にしました。バックアップデータに含まれているデータ一覧が表示されます。

バックアップの詳細が分析された後。デフォルトではすべて選択されている状態になっている。
10.バックアップから取り出すデータを選択して、あとはPCにエクスポートするか、端末に復元を行います。復元画面は、iOSデバイスからリカバリーと変わらないので割愛します。

取り出すデータを選択して、あとはPCにエクスポートするか端末に復元するか選ぶのみ。
「iTunesバックアップ(iCloud)からリカバリー」を利用する時の注意点
注意点は、iOSデバイスからリカバリーと似ています。
端末にデータを復元したい場合で、iTunesでバックアップの暗号化を有効にしている場合は、無効にする必要がある
PhoneRescueでは、暗号化されたバックアップを利用したデータ復元ができないため、iTunesバックアップ機能を利用している場合はあらかじめ暗号化機能を無効にしておく必要があります。
バックアップから特定のデータを取り出したい場合、暗号化については特に考慮する必要はありません。
端末にデータを復元したい場合は、データ復元後に「iPhoneを探す」を再び有効にする必要がある
iPhoneは仕様上、データを復元する際はiPhoneを探す機能をいったん無効にする必要があります。
データ復元後にこの機能を再び有効にしないと、iPhone紛失時にiPhoneを発見できる可能性が著しく低下します。くれぐれも設定を再度有効にすることを忘れないでください。
使ってきて見えてきた有効な利用シーン
「PhoneRescue-iOSデータ復元」は、iPhoneの復元機能に復元したいデータを差し込んで転送するというユニークな発想の製品でした。そんな製品を通して、筆者は以下のようなシーンで有効であると感じています。
- 削除してしまったデータを復元したい
- バックアップデータから特定のデータのみを取り出したい
データ復元アプリについて全般的に言えることですが、前者については必ずしも狙いのデータが復元できるとは限らないことにご注意ください。しかしながら、脱獄しなくてもデータ復元ができるというのはユーザー側でセキュリティリスクを負わなくて良いため、筆者としては非常にお勧めできる製品に感じております。
PhoneRescue-iOSデータ復元 の詳細情報
入手先
PhoneRescue-iOSデータ復元(https://www.imobie.jp/phonerescue/ios-data-recovery.htm)
動作環境
- Windows OS: Windows 10, 8, 7, Vista, XP, 32/64ビット両方
- Mac OS: macOS High Sierra Beta, macOS Sierra, OS X 10.11,
- 10.10, 10.9, 10.8
- iOS: iOS 11 Beta, iOS 10, 9, 8, 7, 6, 5
- 解像度: 1024 × 768 ディスプレイ以上
- CPU: Pentium 4 2.4 GHz以上
- RAM: 512 MB のシステム メモリ
- ディスプレイ カード: アクセラレート3Dグラフィックス
– 64 MBのRAM - サウンドカード: Windows互換のサウンドカード
- ハード ディスク: 100 MB 以上の空き容量
- その他: Apple Driveサービスがインストールされていること
対応デバイス
- iPhone シリーズ: iPhone, iPhone 3G, iPhone 3GS, iPhone 4, iPhone 4S, iPhone 5, iPhone 5s, iPhone 5c, iPhone 6, iPhone 6 Plus, iPhone 6s, iPhone 6s Plus, iPhone SE, iPhone 7, iPhone 7 Plusなど。
- iPad シリーズ: iPad, iPad 2, iPad 3, iPad mini, iPad 4, iPad mini 2, iPad Air, iPad Air 2, iPad mini 3, iPad mini 4, iPad Proなど。
- iPod シリーズ: iPod touch 1, iPod touch 2, iPod touch 3, iPod touch 4, iPod touch 5, iPod touch 6など。
コメント