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あまり知られていませんが、歴史が深いPCオーディオの音声形式の一つにWavPackがあります。ここ最近、DSD関連で新しい試みをしているので、少し検証してみました。

今までなかったPCで再生するためのDSDの可逆圧縮形式

DSDの可逆圧縮は非常に限定的で、今まではDSTという形式のみでした。これは、SACD上で扱われるもので、PCで再生することを想定していないものでした。

そのため、再生可能なDSDファイルを扱うためには、無圧縮の巨大なデータを保管せざるを得ませんでした。いくらストレージが大容量化した世の中とはいえ、コンパクトに収納できるに越したことはありません。

つい最近までPCで再生可能な可逆圧縮のファイル形式は、パルス符号変調(PCM)によって符号化されている音源のみを対象としたものになり、ΔΣ変調を用いたDSDの可逆圧縮には対応していませんでした。パルス符号変調とΔΣ変調については「ハイレゾ音源ファイルのスペックを理解する」をご覧ください。

そして2016年8月、WavPackがPCMに加え、DSDの圧縮にも対応しました。

そもそもWavPackとは?

WavPackとは、David Bryant氏が1998年頃から開発したオープンソースの音声形式になります。その大きな特徴は、非可逆圧縮(ロッシー)と可逆圧縮(ロスレス)の両方を使うことができる点になります。

圧縮モード 特徴
ハイブリッド 非可逆圧縮されたファイルを出力するモードになります。非可逆圧縮なので、ファイルサイズが小さくなる半面、元の音源ファイルと全く同じ音質が得られなくなります。ファイルの拡張子はwvになります。
ハイブリッド(訂正ファイル付き) 非可逆圧縮されたファイルと訂正ファイル、合計2ファイルを出力するモードになります。2つのファイルが揃っている状態で再生すると、元の音源ファイルと全く同じ音質を得ることができます。つまり2つのファイルがあることで可逆圧縮になります。非可逆圧縮ファイルの拡張子はwv、訂正ファイルはwvcになります。
ノーマル 可逆圧縮されたファイルを出力するモードになります。1つのファイルで元の音源ファイルと全く同じ音質を得ることができます。ファイルの拡張子はwvになります。

扱いかPCMと異なるDSDの圧縮モード

ここで注意すべきなのは、前述の3モードは使えるのはPCMによって符号化された音源のみになるということです。

WavPackによるDSDの圧縮は、ノーマルモードだけになります。また、出力されるファイルの拡張子はwvになるため、PCMの音源と区別が付かなくなるのも注意点になります。

WavPackでDSDを圧縮した時の圧縮率は?

foobar2000のSuper Audio CD Decoderバージョン1.0.4から試験的ではあるもののWavPack DSDの再生に対応しました。圧縮と再生環境の両方が構築できるようになり、やっとWavPack DSDが実用段階になってきたと判断し、今回圧縮テストを行ってみました。圧縮結果は、以下の通りになります。

音源 音源スペック 元ファイルのサイズ WavPackで圧縮後のサイズ 圧縮率
Tchaikovsky Symphony No. 4 – USSR Symphony Orchestra conducted by Yevgeny Svetlanov (Pure DSD)のトラック1 DSD256
(11.2MHz/1bit)
3,178,642,695 bytes 1,332,985,848 bytes 44.28%
ベートーヴェン:交響曲第2番&第8番(Live In Mito / 2015) のトラック1 DSD64
(2.8MHz/1bit)
552,405,113 bytes 244,594,046 bytes 41.94%

結果的に元ファイルの半分未満という高圧縮率になりました。圧縮の傾向はPCM系音源と同じだと思われますが、圧縮されやすいクラシック音楽の音源を選んだから高圧縮になった可能性は0ではありません。

実はWavPack DSDは使えるかもしれない、という結論

検証前はWavPackは汎用性がないし、DSD圧縮が対して使えないのではないかと思っていたのですが、実際に使ってみた感想は「使えるかもしれない」というのが正直なところです。

その理由ですが、

  1. 実際に大きな圧縮率が期待できる
  2. 圧縮することによりファイルにタグを埋め込むことができるようになる

という2点があげられます。特に2番目について、wvというコンテナ形式は昔から存在しているため、旧来からのタグエディタ(例えばSTEP_Kなど)でもきちんとタグを入力できるという利点があります。PCで再生する以上、タグにきちんと情報が入っているかは音楽再生の勝手に大きく影響を及ぼすため、筆者はここを大きく評価しています。

参考情報:WavPack DSDを扱うためのアプリ

再生アプリ:
・プレーヤー:foobar2000
・上記のコンポーネント:Super Audio CD Decoder (要バージョン1.0.4以上) ※
※バージョンの特性上、DSD Direct出力はできません。DoPかPCM変換による再生となります。

圧縮アプリ:
・エンコーダー:WavPack
・上記のフロントエンド:BatchEncoder

参考情報:WavPack DSDを作成するための方法

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